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1.なにを軸にしてまなぶのか

以下の文章は2009年の夏に勤務校内の研究会のためにわたしが単独でまとめたものです。原題は『英語科がいま、とりくんでいること』でした。わたしが1999年度からつづけてきたとりくみが2007年度から英語科の新教科課程となり、そのとりくみについて報告しました。そのため、「英語科」のとりくみとして書きましたが、表わされている考え方や独特な用語はすべてわたしが発想したもので、それらを含めて教科課程に採用されているので、著わしたすべてが Kenneth I. Cowart のとりくみそのものです。念のため。

特定の名称を一部伏字としました。



(1) カリキュラム再編成の動機

英語科では、2005年度から教科課程の再編成にとりくんでいる。その動機を『2006年度●●●●●●● ●●●●●●提案文』から拾いながら述べると、おおむね次のとおりである。

「現状では、英語をとおして教材と向きあうことがまず困難」な生徒が多く見られる。そのような現状において、「これまでのように授業を展開しているだけでは『自分のことばで表現する』という目標は達成しにくいと感じている」。具体的に述べれば、「文法事項を順々にたどっていく」ことを軸にして授業をくみたてていては、「断片化されたことばを機械的にまなぶ作業に終わってしまうことが多く」、「英語を身につけることから遠くな」っている。

「目標にたどり着くには、どのようなプロセスをたどるのかが大事であり、プロセスが結果を導く」。「いったいどのように英語を生徒の前にさしだせば、生徒一人ひとりが実感をもって『自分のことばで表現する』ことに向かっていけるのだろうか」。

この動機から明らかなように、再編成の議論における中心的課題は、「なにを軸にしてまなぶのか」である。

(2) 文法・構造シラバス

「シラバス」という語がある。「講義概要」や「教授細目」などと訳され、狭義では〈ある課程において学習される項目の総体〉をさす。外語教育では「目標言語項目の選択とその配列が最大の関心」であり、「そのようなシラバスとしては、言語内容の選択・配列の単位として何を選ぶかによって(A)文法・構造シラバス、(B)場面シラバス、(C)概念・機能シラバスがある」。これらの名称は、言語内容を選択・配列するための構成単位の違いを表わすものであり、(B)および(C)においてもその指導内容に文法・構造は含まれる。この点については、次の記述が参考になる。

クラッシェンは習得と学習を区別して,習得を「言語を『拾い集める』こと」,学習を「言語に『ついて知る』こと」としている。この仮説を適用すれば,ヴァン・エックやウィルキンズらの機能・概念シラバスは習得側の軸上に位置付けられ,伝統的な文法・構造シラバスは学習側の軸上に位置付けられる。これらの関係について田中正道は今から十年以上も前に,「概念・機能シラバスの唱導者たちが強調しているように,文法シラバスを補完しこそすれ,とって代わるようなものではないのである」と誤解を糺した。クラッシェンもまた,習得の重要性を指摘したのであって,学習を否定したのではない。クラッシェンは「我々は,習得の機会と適切な学習の可能性の両立をめざした計画を立てたいのである」として文法学習の必要性を明言している。(中村 1997)

つまり、いずれのシラバスにおいても文法・構造の学習は必要とされている

私たち英語科においても、文法・構造の学習は欠かせないと考えている。それどころか、再編成中のカリキュラムは、内容の選択とその配列の系統性について文法・構造を軸に構成されている母語と同じように外語をまなぶことはできない。したがって、母語であれば無意識に身につく文法も、外語学習では意識的に、しかも系統立ててまなぶ必要がある


  1. 広義では、教科・科目の目標、内容、使用教材、指導計画、指導方法、評価方法等を記載するものとされ、カリキュラムと同義で用いられる場合もある。
  2. 『英語教育 現代キーワード事典』から引用
  3. 同上
  4. 中村節夫 1997 「自発的な発話を目指した小学校英語カリキュラムの作成U 〜機能−構造編成による指導内容の体系化〜」(『京都市立永松記念教育センター 平成9年度研究紀要』所収)

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