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2.「学校文法」に足りないもの

以下の文章は2009年の夏に勤務校内の研究会のためにわたしが単独でまとめたものです。原題は『英語科がいま、とりくんでいること』でした。わたしが1999年度からつづけてきたとりくみが2007年度から英語科の新教科課程となり、そのとりくみについて報告しました。そのため、「英語科」のとりくみとして書きましたが、表わされている考え方や独特な用語はすべてわたしが発想したもので、それらを含めて教科課程に採用されているので、著わしたすべてが Kenneth I. Cowart のとりくみそのものです。念のため。

特定の名称を一部伏字としました。



(3) 「学校文法」に足りないもの

文法とは、

その言語体系において、語句と語句とがつながって文を作る時の法則
(『新明解国語辞典第五版』)

であるが、一般に学校で教えられている「文法」(これを「学校文法」という)をまなんでも、語句と語句とをつなげて文をつくることは生徒にとってむずかしいことのようである。これは、「学校文法」が真に「語句と語句とがつながって文を作る時の法則」になりえていないからだと推測する。

その点について、『2006年度●●●●●●● ●●●●●● 報告と提案』に次のような記述がある。

生徒はよく「文が書けない」という。その理由にあげるのが「どういう順番で書けばいいのかわからない」「単語がわからない」ということばである。

注目すべきは理由の前者である。やはり、「学校文法」をまなんだだけでは、語句と語句とをつなげて文をつくることはむずかしいのである。そして、彼らは、書けるようになるためには「どういう順番で書けばいいのか」をまなぶ必要がある、といっているのである。

(4) まずは〈文のくみたて〉を

次の3つの文をご覧いただきたい。

ア) I ran along a river for a while.
イ) It is getting dark around here.
ウ) We have known the importance of the early years of a child's life.

従来の「文法」では、その違いに着目する。それぞれ上から「過去時制」、「現在進行相」、「現在完了相」が用いられている。しかし、3文はある点で共通している。それは〈くみたて〉だ。語句と語句とが次のようにつながっている。

基本の〈文のくみたて〉

その後に続く要素まで含めれば、次のように示すことができる。

〈文のくみたて〉1

どの文にも共通しているという意味で、この〈くみたて〉は上記の違いよりも上位に位置すべき学習内容ではないだろうか。そして、なにより、生徒が求めている「順番」そのものである。中学において英語をある程度まなんでいる高校生は、「どういう順番で書けばいいのか」を示す〈文のくみたて〉をまずはしっかり学習すべきではないだろうか。

大津由紀雄も、文法をまなぶ必要性を説いたうえで、次のように語っている。

では、英文法を学ぶにあたって一番大切なことは、何なのでしょう。

それは、文の構造、つまり、成り立ちをしっかりと把握することです。〈中略〉特に、英語では語順が重要な役割を果たすからです。(大津 2007)

ついでながら、生徒に提示する〈文のくみたて〉は2つだけである。@以外のもうひとつは次のとおりだ。

〈文のくみたて〉2

Aのようなとらえ方をし、合わせて語を中心的な意味でとらえるようにすると、thatやwh-語を「関係代名詞」、「関係副詞」、「接続詞」などとわけてまなぶ必要がなくなり、学習項目が減る


  1. 〈述語が必要とする情報〉とは、イ)における"darker"、およびウ)における"the importance"のことである。イ)を"It is getting"「なりつつある」で終わらせることはできない「どのように」という情報が必要だからである。ウ)も同様に、"We have known"「私たちは知っている」で終わらせることはできない「なにを」という情報が必要だからである。それに対して、ア)は"I ran"「走った」で終わらせることもできる。このように、述語によって情報の要/不要がある。そこで、〈述語が必要とする情報〉には    を施すだけにし、〈文のくみたて〉の要素として必要不可欠な主語と述語は    で囲うようにしている。
  2. 大津由紀雄 2007 『英語学習 7つの誤解』(NHK出版)
  3. 連結詞とは、(従属)接続詞と関係詞に共通する「文と文をつなぐ」働きに着目し、まとめてひとつの品詞ととらえたときの名称である。寺島隆吉(前岐阜大学教授)によって名づけられた。このようにとらえると、たとえば、thatを接続詞と関係代名詞のどちらかに、whenを接続詞と関係副詞のどちらかに分類する必要がなくなる。また、thatは「それ」、whenは「どんなとき」という中心的な意味さえ知っていれば、さまざまな使われ方をしていても、少ない説明で生徒はこれらについて理解することができる(もちろん、語順どおりに英語をとらえることが前提である)。

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